いぬふぐり

りんごの樹の下に広がる運河のような小さな星の群生。
天の川の上に浮かんだまぼろしのようなりんごの樹々。
いぬふぐりのお花畑の上を泳いでいる妻もまぼろしか?
だれよりも好き合って結ばれてもはや20年をこえてしまったあの日々。
喜びよりも
楽しいことよりも
はるかにつらいことばかりの年月をくるくると鏡のように映して
ふわふわとシャボン玉が飛んでいく。
かるいかるい人の人生。
みじかいみじかい人の時間。
せめてこんな日はあおい吸い込まれそうな星の運河に寝そべって
妻よ若かったあの頃のときめきを思い出すなんてのはどうだろう。