夕焼け

投げ込んだ石ころで張りつめた水面が
だんだんと幾重にも波紋が広がっていくように
明日の底無しの晴天を約束して
りんご達の心意気
夕焼けが世界を覆い尽くしていきます
害虫防除という恐ろしい仕打ちに勝ち抜いた虫達は
この秋 
輝かしい鉄の姿に脱皮して
種族繁栄の大仕事を成し遂げました
くやしいが君達の生命力には脱帽だよ
その姿は紅色に溶けて勝利に昴ぶり酔っているように見えます
夕焼けは辛抱強く生きぬいたものたちと
空に輝く星の数よりもまさる見渡すかぎりの木の葉を焼き尽くしていきます
それらと同席する人の胸はふいごのように感動の高まりを増幅します
りんごのように みんなのように
私は切ない欲望にかられる
炎の大海原
何もかもが燃え上がる
私はすっ裸になってへその穴から陰毛までも染め上げます
諸君おめでとう
私もおめでとう
ようやったなー
無礼講じゃー
ほんに無礼講じゃー
だけど幸せな時ははかないもの
盛り上がった雰囲気を逆撫でして
鷹に追われて雉鳥が空を裂いていきます
私を
りんごを
目に映るものみんなの酔いを覚まして
一目散に飛んでいきます
にぎやかな楽しいうたげも必ず終わる
色褪せて舞台に幕がおりる淋しい静かな秋の夕
さあ
酔っ払いは帰った
帰った