剪定


年が明けて わら一節ほどづつ日が長くなる。
かた雪の上を生ゴムの長靴でりんご園へ行く。
サングラスと顔の区別も付かぬ真っ黒な剪定作業の親父たち。
りんごの樹は冷たい大気と雪の上で身構える。
これ又 真っ黒な闘牛のようだ。
枝を逆立でてごついからだで威嚇する。
親父たちは刃物を持ってはいるが彼らと対立するためではない。
医者であり 恋人であり 弟子でもある。
母でもあり パートナーなのだ。
広い園の剪定が終わるころ
大地も
そこに立つものも本来のやさしい姿を取り戻す。
切り取った枝を女たちが集めて焼く
始動するときが来たことを天にうながすために。
あっちの園から
こっちの園から
まっすぐ まっすぐ乳色ののろしが青い空にのぼっていく。