くだもの物語<春>

いちげ
イチゲ
 雪が溶けるとまず咲き始めるのがイチゲの花とおおいぬのふぐ り。イチゲは「はかない」という言葉が良く似合う淡いピンクの小さな花です。写真はまだ咲き初めで上を向いて大きく広がります。私はこの咲き初めの横向きのイチゲが大好きです。 一面ブルーの小宇宙を作り出すのが「おおいぬのふぐ  り」です。5ミリほどの小さい花なのですが群生になるとブルーの霞がかかったような美しい色となります。よく見ると、こんな小さな花でも夕方には花を閉じ眠り、ブルーの霞が消えるのです。
おおいぬのふぐ り
 とにかくみわたす限り花、はな、ハナ・・・さくらんぼ、なし、りんごなどなど、次から次へと咲く順番を待ち続けていたように花を広げていきます。とにかくきれい。
 桃とすももは実の形が似ているけれども、花はちょっと違います。とにかく桃は派手。不思議なのは咲いた時は色が薄く、時間がたつにつれだんだんピンクが濃くなるのです。 すももは小さい白い可憐な花が枝いっぱいにつきます。プルーンも同じような白い小さな花なのですが時期が遅くなります。
すもも
ラフランス
 ラフランスのつぼみは指輪の宝石のように5本の爪に真珠が挟まれているように見えます。真っ白な花を咲かせます。 さくらんぼは思ったほどピンクではなく、どちらかといえば白に近い色の花が咲きます。やはり普通の桜よりも力強い大きめのしっかりとした花です。
 春はいいですね。やっぱり。
さくらんぼ
リンゴの花

 この時期の作業といえばりんごの摘花、いわいる花つみですね。りんごの花はバラのようなつぼみから真っ白い花を咲かせます。可憐という言葉がぴったり。あまりにきれいで摘み取るのはちょっと罪悪感・・・だけど摘み取るのには2つの理由があって、ひとつはいい実を成らせるために数が多く成りすぎないようにするため。もうひとつは、人工授粉用の花粉を採るためです。りんごの花は桜の花と違い、真ん中に大きく先に花を広げる中心花と、そのまわりを囲む側花があります。りんごの花が可憐にみえるのは、花とつぼみが同時に見られるからなんでしょうね。
 まずはどれが中心花なのか側花なのかわからない。「わからないような花は、ろくな実にならないんだよ」といわれても可憐に咲く花を摘み取るのは思いきりのいる作業なのです。
これがはじめの状態
側花を摘み取ったあと
これが側花です
 花摘みはこの側花と1年目についた花を摘み取ります。5月の暖かな光の中、りんごの花の淡い香りを乗せて風が通り過ぎ、遠くから小鳥の声がしてだんだんねむたくなるようなゆったりとした時間が流れていきます。う〜ん、気持ちいい〜! だんだんねむたくなってきて・・・「おっと危ない!」ふと気がついたところがはしごのてっぺんで作業中だったりするわけですね。
 摘み取った花は、濃い緑の雑草の上に白い模様を描きながらくるくると廻りながら舞い降りていきます。はしごの上から見るととてもきれい。花柄の地面ができるくらい花を摘み取ってしまうのです。  さて、この摘花の作業、実は1日に数本の木しか進んでない。このままじゃ花がすぐ散ってしまうのでは?と心配になるのだが、この摘花の作業は摘果の文字に変わって、実を摘んでいく作業になります。「そんなに簡単に終わったら仕事がなくなっちゃうじゃない」・・・夏の間ずーっとこの作業なんです。
散らばる花
 プーンと耳のそばをかすめて蜂が飛んでいきます。なんか蜂と同じような気持ちになってきます。
 蜂の巣箱です。蜂は蜂屋さんが持ってきて置いていくそうです。蜂が死んでしまうため町全体で期間を決めて農薬を撒かないようにしています。
 これが巣箱の中身です。こんな感じのプレートが数枚入っています。
 中には蜂がいっぱい!って当然の様な気がするでしょうが実物はものすごいですよ。これだけいると迫力。でもちょっとかわいく見えてくるから不思議。
 ミツバチは蜜を蓄えるため防水性の巣を作ります。不思議なことにミツバチは蜜をおなかの中で蝋に変えるそうです。
 朝日町のビーズファームでは、プレートからはみでた巣(むだ巣)を集めて、蜜ろうそくを作っています。この巣=蝋を溶かして集めて固めたのがこの写真。
 ミツバチが一生かかって集められる蜜の量はたった小さじ1杯。そして蝋を分泌するためには、蝋に対して10倍の量の蜜を食べなければならないそうです。
 こうしてできた蜜ろうそくは灯すと暖かい炎とともにほのかな甘い蜜の香りがします。
ビーズファームの安藤さん、ご協力ありがとうございました。
 どえ〜っ!たかいぞぉ〜!というわけで一体何をやっているのかといいますと、さくらんぼの雨避けのビニールハウスの骨組みを作っているところなんです。当然木の上にビニールハウスをかけるものだから、ハウスの高さはそれなりに高いわけで・・・でも高いところから見る春の景色は気持ちのいいもので思わず居眠りしたくなる・・・けど、こんなところで居眠りなんてできないじゃないかぁ!  サクランボの木にもびっしりと花がついて、春の日差しが降り注ぐとあちこちからブーンと音がして無数の蜂たちが花粉を集めにきます。こんなにどこに住んでいるんだろう?と不思議になるくらいたくさん飛んでくるのです。
 こんな蜂たちは結構きまぐれで、春の日差しが届かない日にはほとんど来ません。特にさくらんぼは受粉が必要です。そこで登場するのが毛ばたき部隊。蜂の代わりに受粉の作業をするわけなのだが、これが思ったよりも重労働。
 長い棒のさきには水鳥の羽がついている刷毛で、まずは受粉させる木の品種以外の木(受粉樹)の花粉を1本分たっぷりとつけて、それからすべての木にもれなく花粉をつけていくのです。始めのうちはこんなの楽勝!などと思ってやっているのですが、この毛ばたきが結構重い。そのうち腕がだるくなってきて首が痛くなってくるのです。
  摘果の作業中です!
 花が終わると、どんどん緑に包まれていく・・・毎日そんな気分になるくだもの園です。雨が降り、まさにその水をすって葉の数を増やしていく様子が感じられます。空はすでに夏の雲。小さな実をつける季節となりました。花から引続いて今はひたすら摘果作業の毎日です。いい実を残しひと枝が適当な数になるようにつみ取っていきます。
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いい実を残して落としていきます
さくらんぼのできはじめ
 とにかく一番最初に実の形になるのがさくらんぼ。なんといっても6月の終わりには出荷が始まるのですから。さくらんぼのできはじめは、緑のつるつるした小さなたまご形の上にはげカツラをかぶったように枯れた花びらを乗せています。花から実になる姿は毎日みているのにもかかわらず不思議なものです。実がおおきくなると、はげカツラを自分の力で脱いでさらに大きくなっていきます。このはげカツラ、元気な木はすぐ脱ぐのですが、弱い木はなかなか脱げず病気になりやすいそうです。はげカツラを脱いださくらんぼはつるつるの緑のまちばり。これが赤く変わっていくんですね。
こんなに大きくなりました

ふじりんごのできはじめ
 実は小さくても形はなんとなくりんごの形をしていませんか?。どんな種類でもそうなんですが、花の時は上を向いていて、実になって大きくなり自分の重さで下を向くんですね。当たり前のことなのですが、じつは見たことがないことって多いんです。可憐な花から実になる変化。樹は大きな葉を広げ木陰を作り始めました。

冬へ 夏へ