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雲ひとつなく晴れ渡ったいい天気。2月の後半からは剪定(せんてい)作業のスタートです。下にたまっている雪は80cmはあるでしょうか。表面が固いときはスキップができるほど気持ちよく歩けるのですが、ちょっとゆるんでくると一歩進んだだけで「ズボッ」と片足がはまって身動きがとれなくなってしまうのです。これはあちこちに落とし穴が掘ってあるのと同じで、歩くだけでもひと苦労。ただ、この雪のおかげで80cm高い所で作業ができるのが利点なんでしょうけどね。 剪定っていうと、伸びすぎていらなくなった枝をただパチンパチンと切っているんだなと思っていませんか?「剪定のときがいちばん面白いのです」花も実もないときにいったい何が面白いのかなぁと思うでしょ。これがほんとに面白いです。 |
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剪定に使うはさみの刃先は日本刀の刃先にそっくり。りんご作りの始めは武士が始めたそうで、その名残なんだそうです。その剪定ばさみとのこぎりを腰に付け剪定の作業の開始です。
まずは道具の使い方から・・・「はさみはこじらないように、枝を押しながらこうパチンと切るんだよ」と見本で奈良崎さんが直径2センチほどの枝を平気に切ってしまう。まねをしながら、枝を切ってみる。見た目よりも力が必要でギューッと力をかける。キュキュキュと少しづつきり進んでいってパチンと切れる。おぉ、なんと良く切れるはさみだぁ!枝を押しながら切るのがこつですね。 |
盆栽の剪定というのは形を整えるもの、くだものの木の剪定は、おいしい実を成らせるために木と語りながら木を生かして切っていくといった方がいいでしょうか。「木って人間と同じなんだよ」と奈良崎さん。 花芽をたくさんつけるお母さん枝、根本からまっすぐに伸びて葉をたくさん付け養分を作り出すお父さん枝があって、実をつけるお母さん枝を残して切っていくのだが、お母さん枝ばかり残したのではだめ。水分を吸い上げ栄養分を作るお父さんをちゃんと残してやらなければならない。このお母さん枝、いざという時にはキャリアウマーンに変わってお父さん枝の代わりに葉を出し養分を作るそうです。キャリアウマーンに変わったお母さん枝は数年後、ちゃんとおいしい実をつける普通のお母さん枝に戻る。ちなみにお父さん枝は変わることなくそのまま実をつけないそうです。 一度実がなったあとから伸びた枝からは甘い実がなること、葉が小さくなることなどなど奥は深い深い。「とてもじゃないけど素人には絶対切らせられない」ごもっともです。はい。 こうやって枝を落としていくと全体がすっきりした感じになって、枝の先すべてが天を見上げていくようになっていきます。目指すと言う言葉は「芽」が指し示すというところからきていて、目指す方向をはっきりさせることが大切なんだよという言葉を聞いて、木でも人間でも同じなんだなと感じました。 |
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「こうやって枝を上手にきっていくと木の全体がしなやかな木になるんだよ」と奈良崎さん。あの大きなりんごの木の先の小枝をつまんで揺らし始めた。すると木の全体が向こうはじのほうまでゆさゆさと揺れるではないですか! りんごの木も、子どもたちも、ゆっくりと時間をかけて良いところをのばして、大切に育てていくことが、しなやかに育てることなんだな・・・と揺れる木を見て感じました。 男の私が言うのもなんですが、剪定をしている奈良崎さんはとっても「かっこいい」です。真剣に仕事をする職人の目は本当に素敵なものです。見たい人はぜひファームステイしにきてくだいね。 |
剪定作業は枝を切るのはもちろんなのですが、切った枝の跡に保護材を塗っていくのです。高いところも塗れるように、竹の棒の先にハケをつけて作業開始です。人間がウイルス感染してインフルエンザになるのと同じように、樹もウイルスに感染して枝の表面がボロボロになって枯れてしまうのです。樹は外側の表皮に近いところがより多くの養分を循環させているので、この部分をしっかり塗ることが大切です。剪定は樹にとってみれば大手術のようなもの。枝を切るのがお医者さんで、傷の手当をする看護婦さんが私の役目。手は抜けません。 | |
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ほんとに春になったら雪が溶けるんだろうか・・・と心配になっている間に、少しづつ雪が溶けだします。黄金色に輝く福寿草や、赤ちゃんのおくるみの中からでてきたようなふきのとうが春の日溜まりにありました。この時期の天気はほんとに不安定で、夜中に突然雨が降りだしゴロゴロピシャン!と雷が鳴り出したり、家が吹き飛ぶんじゃないかと思うほどの大きな音をたててものすごい風が吹いたり。 | |
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「どれ、そろそろ仕事すっぺ」と畑にでるとバタバタバタ・・・と雨が天から落ちてくる。「しゃぁないな、どれ、かえっぺが」と帰ろうとするとおてんと様が顔をだす。降ったり止んだりこんな落ちつかない天気をこのへんでは「おちあれ」と言います。
朝の最低気温が-3度、日中の最高気温が23度なんてこともある「おちあれ」の日。気象の激しい朝日町だからこそ植物が厳しく育ち、おいしいくだものができる環境になるんですね。 「おちあれ」の日が終わると花満開の春を迎えます。 |